私が登った百の名山&低山=東北編=「熊の親子に遭遇し逃げ帰った寒風山」

 ハプニングは午前10時40分に起きた。寒風山頂上が目前で、時間的にも10分程度で山頂到達の地点であった。
 今回は仙台研修旅行に参加し、翌日曜日地元在の同級生Aさんの案内で、山形、宮城県境の寒風山(1117m)を目指した。彼とは3年前やはり県境にある二口峠を歩いた(03/12/6)。国道48号線関山トンネル傍から上り始めた。取り付きから急坂で、しかも肩幅程度の山道。最初の沢を渡るとジグザグの葛篭折れを繰り返して高度を上げる。注(写真は「自然朴の会」山行記録HPより)
 東北特有のブナ林の中を、順調に行く。梅雨の時期で雨が心配だ。尾根に出ると左方に頂上が見えた。二度目の休憩を取った先からは、登山道としては珍しい直線の道が続く。また左が開けて、先の山は南面白山とAさんが教えてくれた。寒風山は県境にある山だが、仙台市と我が故郷東根市が県境を接して、現在は県境を越して東根市に入っているのかもしれない。
 小さなピークに到着し、コブノセとある。私がずっーと先頭だ。ブナ林を抜けて、少し下って笹藪の中に切られた道を進むが、草が覆い最近の踏み跡が見当たらない。東北の深山なのだろう。そう言えば、日曜日なのに、登山開始以来人っ子一人にも出会わない。雨模様で控えたのであろうか。先程来頂上が見え始め、草原状の藪から少し上りに掛かり、またブナ林に入ろうとした。

 突然、ザ、ザ、ザっと藪を掻き分ける音がした。カモシカか、それとも熊か。いつかカモシカが草原を走るのを目撃した時、似たような音を聞いたことがあった(94/8/8)。我々を察知して右の方へ逃げたのだ。しかし、フン、フンと動物の鼻息らしい音がする。3m程先である。後ろのAさんにその旨伝え、前方のブナの木を見上げたら、真っ黒な小さな獣、熊の子供が、こちらを見ているではないか。そうすると先程の音は親熊で、近くに潜んでいるに違いない。これはやばい、子連れの母熊は一番危ないと聞く。
 二人は急遽戻ることにし、Uターンした。一瞬、熊の子を携帯で写そうとも考えたが、逃げるのが先であった。熊の方が我々の接近を知り、先に逃げてくれたから助かった。出っくわしたらと思うとぞっとした。Aさんがザックに鈴を付けていた。これが静かな山中では熊に届いたのかもしれない。普段は付けていないが、今回特別に準備したという。何か感ずるところがあったのだろうか。私もジュネーブで求めたカウベルを付けているが音が小さい。
 コブノセまで戻り、Aさんは昼食にしようと言ったが、熊が追って来そうで、食欲がわかない。臆病だなとAさんは言う。こういう場合は、臆病な方が良いんだと言い訳をした。そのまま登山口関山トンネルへと下りた。丁度これから登ろうとする男性に熊出現を伝えた。彼はその地点を我々に確認しながら、笛を持っていると言って、山中へ入って行った。作並温泉で汗を流し、食事にした。仙台へ戻り、Aさん宅に招かれて、当地名産で旬のほやを肴に麦酒をご馳走になった。(2006/6/25 10/100)                                                               追記 熊との直接の遭遇の記憶は未だに残る。熊たちの生活圏に、こちらが挨拶なしに踏み込んだのだから止むを得ない。熊さん御免なさいで、被害を受けなかったのが幸いだったろう。東信濃の山中でカモシカに出会ったが、こちらを一瞥して去っていった(葛尾城址 94.4.25)。羅臼岳の登山道でエゾシカ二頭にも遭遇した(07.8.31)。今年の熊さん達の行動は異常なようだ。
仙台在の高校同級生Aさんとは、栗駒山や会津磐梯山を登った。