私が登った百の名山&低山=関東編=「シラジクボ経由が正解であった武甲山登山」

 遂に武甲山に登った。毎年目標としていた山で、大袈裟だが約50年振りに約束を果たせた。昭和40年頃、職場旅行で秩父長瀞へ出掛けた際、山好きの先輩Fさんが、バスの車窓から見える武甲山を指さし、“あれが武甲山だ。一緒に登ろう”と叫んで、頷いたのであったが、長い間そのチャンスは巡らず、その後Fさんも亡くなったと聞いた。

 杉林の中表参道コースを上がる 表参道コースの生川から上り始めた。Kさんが同行してくれ、彼の車で生川迄入り楽にアプローチが出来たが、登山口駐車場は満車で、人気のある山を実感した。    
直ぐの養鱒場から急な坂で、多くの登山者と前後になりながら山中を行く。林道を過ぎ登山道へ進み18丁目に至ると小さな祠と不動の滝があり、小憩。さらに杉林の中の山道を上がり続ける。中間の26丁目付近で休憩を取るグループがあり、大杉広場かなと思ったが違い我々は先行。目指した広場は32丁目にあり、休憩し大杉を見上げた。周囲は杉が林立する美林の地だが展望はない。腰を上げ深い杉林の下を進む。思ったより傾斜は緩く急登や岩場もない。公務員ランナー川内さんがここでトレーニングしているテレビ放映を見た。いつものようにはKさんに遅れることはない。44丁目付近で、右手先の杉の木の間に白色の地が見えた。武甲山は石灰岩の山で、セメント等の原料として表半分は削り採られているが、石灰岩が露出しているのだろうか。滴が垂れている小さな水場を過ぎると山頂下・52丁目で、御嶽神社。先ずは立派なお社に登頂のご挨拶。そして裏の山頂(1,304m)へと上がった。反対側は採石跡が生々しい大絶壁。下方には秩父の市街地が広がり、その先は秩父の山々から信濃の浅間や谷川連峰とある。両神山の特徴あるギザギザ岩稜に再会した。広くはない最高地点に多くの男女が次々と到達し、我々は記念写真を撮った後、神社前で昼食とした。

 黄葉の唐松林が美しいシラジクボ尾根 下山は、シラジクボ経由コースと決めていた。事前に新ハイ誌で調べて、Kさんの同意も得た。右手の浦山口コースを見送り山頂下十字路を直進し急降下の道を下る。ハイカーは見当たらず我々だけで、荒れた小径を、ストックを使いながら慎重に下り続ける。本日は天候に恵まれ南斜面は日当たりが良く、右手には青空の下、ススキ越しに見え隠れする唐松林が黄葉に染まり美しい。2,3度立ち止まってはシャッターを切った。新ハイ誌情報通りであった。
 鞍部へ下りて、持山寺跡へと左折。片側が切れ落ちた肩幅にも満たない狭路に戸惑ったが直ぐ楽な山道となり一安心。途中、持山寺跡へ寄る。戦国期頃に寺があって、徳川秀忠二男忠長の子松平長七郎在住伝説が遺るという。山奥の小さな削平地には石塔がポツンとあるのみで、一瞥し登山道へと戻った。また杉林の中葛籠折れを繰り返し膝がガクガクし始めた頃に、養鱒場上の林道へと飛び出し、少し下ると登山口であった。今回もKさんに引っ張られて無事念願の武甲山登山を果たしたが、Fさんには報告できない。(2012/11/18 58/100)

追記 武甲山は秩父の山々の主峰のような山である。高さも位置もそう見え、日本百低山でもある(同書162頁)。厳しい山かなと思っていたが、意外にも楽に登れたと思う。人気の山で、山中大勢のハイカーと出会った。最近も秩父へ行くと、中心に聳える山容を眺めている。