私が登った百の名山&低山=関東編=「川治温泉に埋蔵金伝説の南平山を訪ねる」

 南平山(ナンダイラヤマ)は鬼怒川温泉の奥、川治温泉のそばにある山である。同温泉に宿泊する機会があり、夕方現地集合の間を利用して南平山に登る。資料によれば、源平合戦に敗れた平家の落武者が、源氏の追撃から更に奥の川俣、湯西川方面に逃れる際、南平山に平家再興のための軍資金を埋蔵したと伝えられるという。

 川治温泉駅から 北千住から東武線、野岩線直通の電車で川治温泉駅に下車し、鬼怒川を挟んで真向かいの南平山を目指す。小網ダムを通って対岸に渡り、林の中の小径を川治温泉方面へ進むと程なく南平山の案内標識を見付ける。直ぐそばの山道に入ると道は荒れて薄くなってしまった。資料には「標識より少し先」とあったのを思い出し、戻って先に登山口を探すが見当たらない。赤いテープを確かめ再度標識そばの道に入る。思い切って荒れた道を先に進むと次第に道がはっきりし、「頂上まで3km」の標識に出会いホッとする。山頂までは2時間弱の見当か。一旦林を抜けると鞍部に出て左右が開け、左に川治温泉駅、右に同温泉方面が見える。鉄塔の下で休憩し水を飲む。

 独り上り続ける 再び展望のない林の中の緩やかな上りの道をゆっくりと進む。道は悪くはないが最近歩いた形跡はないようだ。そういえば先程から人っ子一人に会わない。ハイキング雑誌に紹介されている程の山だから、本日は土曜日だし一人ということはないだろうなどと思いを巡らす。道を塞ぐ倒木がやたら多くこれを避けながら、二俣分岐の道を左に採り、小さな葛折の道を更に上ると四阿に着く。四阿は休憩する人もなく、林の中にひっそりと立っていた。標識は200mごとに設けられ埋蔵金が描かれた洒落たものだが、荒れた道、倒木、無人の山とはアンバラな感じ。

 山頂で昼食後下山 標識が教えて呉れる残り距離を頼りに山腹にジグザグに刻まれた道を一気に上ると山頂(1,007m)に到達。周りが木々に囲まれて眺望は得られず、頂上を示す標識と埋蔵金伝説の案内があるのみ。誰もいない寂しい山の頂で、簡単な昼食を取る。
 下山は同じコースを採り、ジグザグ道をショートカットすることもなく安全第一で、上りには1時間30分要したが1時間5分で下った。結局山行中他にハイカーを見掛けることもなく、約3時間埋蔵金伝説の山を一人独占した。途中、猿の腰掛けを見付け土産に採ろうとしたら、見事に失敗し木から離れた茸は山の傾斜を転がり落ちて行ってしまった。現在でも山の宝には手を触れさせない平家落武者の怨念だろうか。
 下山後、川治温泉の宿泊先まで歩き、温泉で汗を流した。(99/5/29 35/100)

追記 山中で、人っ子一人にも出会わなかった。その後も含めて、こんな経験はない。それでも寂しさも感じなかったと思う。埋蔵金伝説の案内が多かった。そして、下山後宿泊先の旅館まで歩いて、温泉に浸かった。翌日は、早朝に尾瀬へと出発した。若かった時代のことである。