私が登った百の名山&低山=関東編=「水仙咲く南総の早春に富山に登る」

 今回は房総半島に遠征した。今年から少し遠出して首都圏日帰り圏内に足を伸ばさなくてはと思い、その第一弾として、房総半島の富山(トミサン)にした。

 内房線で 東京駅から京葉線で出発し、蘇我で内房線特急に乗り換えた。富山への起点岩井駅は特急で1時間走っても未だ先だ。木更津の少し先だろう位の感覚であったが房総半島の先端、館山の直ぐ手前が岩井であった。岩井海岸には前職場の海の家があり、家族や同僚と2,3度海水浴に訪れたことがある筈だが、こんなに遠かったのだろうか。房総半島の広さを今更ながら実感した。双耳峰の特徴ある富山は特急車窓から確認できた。

 水仙咲く山道 蘇鉄が繁り、水仙の咲く道を通り、福満寺から山道となった。富山は標高僅か南峰が342m、北峰が350mだが、海辺の山だから0mからの上りを覚悟した。急坂をゆっくりと行くと、1号目を過ぎた地点に水仙畑と出会う。土手一面水仙が咲き誇っている。自生地か。ラッパ水仙とは違い花びらが白色だ。先行した高年ハイカーが三脚を立ててカメラの焦点を合わせていた。

 南峰、そして北峰 5合目近辺で一旦下り、南峰本体に取り付き急な階段を一歩一歩上がる。房総は温暖の地で、流れる汗にたまらず、ウインドブレーカーは先程ザックに括り付けた。スダジイの大木が根こそぎ倒れている。先月の雪害に違いない。南国の樹木は雪には弱いのかもしれない。7合目の休憩ベンチから海側を覗くと東京湾の先に富士を望んだ。最後の石段をこなして頂上・観音堂に到達。南峰は樹木に邪魔され展望はなく、観音堂に軽く参拝して、北峰へ向かった。
 北峰は、十一州一覧台とある展望地で、早速、空、山、海の眺望を楽しむ。海原を望む見晴らしは壮大だ。富士山は雲の上、うっすらと見える連山は南アルプスではないだろう。未だ冬季なのに冠雪がない。その前の山並みは丹沢のようだ。眼下には東京湾から三浦半島を確かめるが洋上に大島は確認できない。大勢のハイカーに混じって弁当を開いた。山頂広場に皇族散策記念碑があった。1年前の事らしい。そう言えば、山頂下に不似合いなトイレが作られていた。

 八犬伝伝説 伏姫篭穴に下る。滝沢馬琴作「南総里見八犬伝」に準えた伝奇な岩穴という。八犬士の母となった伏姫と妖犬・八房の人形が、件の玉とともに穴奥に潜んでいた。岩井駅に戻る途中、振り返ると菜の花畑の向こうに双耳峰の富山が見えた。(2001/2/18 60/100)
          
追記 千葉県には山は少ない。数少ない山の一つが富山で、標高400mにも足らないが、それでも東京湾からその奥の展望が良い。都心からは内房線だが、乗車する度に長く遠いアクセスを実感している。下山口に八犬伝の洞穴があった。富山は、伊予が岳からの復路でも登った(09.2.7)。日本百低山(同書252頁)や日本百低名山を歩く(同書95頁)に登載の山である。