私が登った百の名山&低山=甲信越編=「晩秋に中央アルプス千畳敷カールを歩く」

 登山バスでしらび平へ 駒ヶ根市外れのホテル前から乗ったバスは、山中に入り曲がりくねった急坂を、すれ違うバスを待ちながらゆっくりと上がった。麓では山の木々は色づき始めたばかりであったが奥に入り高度を増すに従い紅葉が広がった。黄色の広葉樹が中心だ。途中、バスが止まり、何事かと思ったら、‘林の中にカモシカがいる’と運転手がアナウンス。カモシカは悠然と草を食んでいた。先日友人Yさんから、‘八ヶ岳山中の下山時に黒い獣に出会いカモシカだった’とメールを貰ったが、小生の経験ではカモシカは茶色であり若しかしたら熊じゃなかったかと思った。しかし、この時期のカモシカはやはり黒色だった。しらび平まではマイカー乗り入れ禁止でバスのみの運行。自然保護や交通混雑の回避には良い策である。

 ロープウェイ利用 しらび平駅からロープウェイに乗る。紅葉シーズンに当たり観光客で混んでいる。寒さを感じてザックからセーターを出した。高度はもう1,662mという。やや早目だが針葉樹の中に映えた紅葉が美しい。眼下には滝が白糸の如く落ちている。沢には数日前に降ったという雪が残り、風雪に耐え崖に這えつくばるダケカンバの木が痛々しい。
 
 千畳敷カールを歩く 千畳敷駅は2,612mにある駅で、裏側には残雪があった。見上げると宝剣岳を中心に鋭峰が取り囲み、その懐に平坦地が広がっている。千畳敷カールである。北アルプス涸沢と似ていると思ったが、青白い岩峰は花崗岩系だからであろうし、沢ではない。早速カール内に設けられた遊歩道を巡る。ハイカーが多く下りの者と交差する。大半が高年婦人グループであることは何処の山も違わない。

 ナナカマドに出合う 真っ赤な実の付けた木が目の前に現れた。ナナカマドだろう。身近で見るのは初めてで、カメラに収めた。同じく茶色のものは不明だ。周囲の植物は立ち枯れている。草紅葉の時期はとうに過ぎたのだろう。既に冠雪したのだ。そんな中でもハイマツは元気だ。尾根に続くルートにも多くの登山者が見える。肩の乗越しから左は宝剣岳、右奥は駒ヶ岳に通じている。膝が良ければ途中までは可能であるが、現在では千畳敷一周が精々だ。剣ケ池を経てロープウェイ駅のあるホテルに戻った。
 中央アルプスの千畳敷は夏のお花畑で有名だ。この時期にこれだけの混雑だから夏山シーズンは想像以上だろう。夏の高山植物を一度訪ねたいと思っていたが、少なくともピーク時は避けなければならない。

 飯田線で帰京 飯田線駒ヶ根駅に戻り、家内と下諏訪駅で落ち合った。信玄の隠し湯とも言われる毒沢温泉は赤錆状色の湯で、飲むと渋味と酸味があり、いかにも病気には効き目がありそう。翌日、ボトルに汲んだお湯を土産にし、諏訪下社春宮と秋宮に参拝して帰京した。 (02/10/18 96/100)

追 記 長野駒ケ根市の研修会に参加し、翌日千畳敷カールを歩いた。氷河期の痕跡で、自然の力には畏れ入るほかはない。晩秋の紅葉の外、見上げた宝剣岳の岩峰は記憶に残る。昨年の夏飯田線に乗り駒ケ根駅を通り、思い出した。